2013年8月14日水曜日

TPPでも生き残れる農家02

  多品目でリスクヘッジを

 TPP反対者の主な反対理由は「大量生産による価格競争に負ける恐れがあるから」だと私は解釈しています。確かに全く同じ品目、同じ品質の生産物を両者がつくっていたとすると、規模が大きい方が単価のコストが下がるため有利になります。前回の項でも触れましたが、日本とTPP参加諸国(主にアメリカ)との農地面積の差は歴然です。つまり狭い日本が価格で競争することはほぼ不可能です。これは日本の農業を愛する私も認めたくはりませんが、農地面積の差は冷静に判断すべきデータであり、覆すこともほぼ不可能なのです。
 大量生産という一本柱では、主力が負ければ終わってしまいますが、支える柱が2本、3本、それ以上あればどうでしょうか。柱が多ければ多いほど、折れずに残る柱の数が多くなります。作付け品目の種類が多ければ大きく儲けをだすことはできなくはなりますが、「どちらに転んでも負けない農業」を築き上げることができるはずです。
 多品目を作付け栽培するということは大変なことです。今まで自分が持っていない新たな知識もたくさん必要になりますし、手間も増えるため人でも多く必要とします。しかし、これが実現できれば様々な環境の変化に依らず生き残れる確率は高まりますし、人手がかかるということは、視点を変えれば雇用を生み出すことであり、地域の力は確実に強まります。
 具体的には果物、野菜、穀物、畜産物のように品目の幅を可能な限り拡げる。レストランと提携するような高い品質のものと、スーパーで安売りできるようなものという具合に価格帯を広げる。同品目内で糖度、食感、色合い、その他に少しずつ変化をもたせバリエーションを拡げることなどが考えられます。日本国内の人口は減少の一途を辿っているため、消費者のニーズに細かく応えることは、顧客数を維持する上でも極めて有効だといえます。

 地球温暖化も無視できない

 地球温暖化はまだまだ収束しそうになく、気候変動によって今までその地方地方で栽培できていた作物が栽培できなくなり、その都度、変化してしまった気候に適した作物を作ることを余儀なくされるでしょう。日本で南洋でしか採れなかった作物が栽培できるようになったことがその兆しです。新しく採れる作物が出始めたということは、その気候に合わなくなった作物が徐々に採れなくなっていくことを意味します。
 ですから予想外の凶作に備える意味においては、TPPで協定を結んでおくことは無意味なことではありません。単に農作物を安く仕入れるだけにとどまらないのです。ですから価格と品質のみが取り沙汰されている今のうちに、日本全体さらには地球全体でフレキシブルな生産力を身につける時代になりつつあるといえるでしょう。

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